85名の専門医が回答、気になる69の質問に最新知見で応える

12月6日、厚生労働省会見室にて記者向けプレスセミナーを開催

「婦人科がん」と聞いて、誰もが不安になる――。とくに子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんは、命に関わる深刻な病であると同時に、妊娠・出産といったライフイベントにも大きく関わる疾患です。

そうした中、金原出版はこのたび、日本婦人科腫瘍学会による編集のもと、「患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン」の最新版(第3版)を発刊。本書では、85名の専門医が患者や家族からの「69の疑問」に対し、最新の医療知見をもとに、わかりやすく丁寧に答えています。

ガイドラインの発刊にあわせ、12月6日(水)には厚生労働省会見室にてプレスセミナーが開催され、書籍の制作に携わった杏林大学医学部産科婦人科学教室の小林陽一教授が登壇。現場で起きている変化と最新治療の実際について語りました。


子宮頸がん――若年層の患者が急増中。鍵は「HPVワクチン」と「検診」

小林教授がまず警鐘を鳴らしたのは、子宮頸がんの現状です。
「以前は高齢者に多かったが、現在は30〜40代、さらに20代の患者が急増しているのが日本の特徴です」

その背景には、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種率の低さがあります。メキシコでは95%以上、カナダや英国でも高接種率を誇る中、日本はわずか0.3%。ようやく今年になって接種の積極的勧奨が再開されたものの、周知やキャッチアップ接種の推進が急がれます。

さらに、子宮頸がんの罹患率はG20諸国の中で日本は第5位。アメリカやドイツの検診受診率が80%超であるのに対し、日本は42.1%にとどまっていることも、発症・死亡率の増加に影響していると指摘されました。


子宮体がん――治りやすいが、生活習慣病への注意も必要

続いて取り上げられたのが子宮体がん。近年、欧米型の食生活や出産機会の減少といった社会変化により、日本でも罹患者が増えています。

「子宮体がんは、初期の段階で発見されやすく、手術で治る確率も高い」と小林教授。5年生存率はⅠ期で95%、Ⅲ期でも70%と良好です。

ただし、早期に治癒しても、心筋梗塞などの心血管疾患で命を落とす方も少なくありません。これは、体がん患者の多くが生活習慣病リスクを抱えているため。最新の医師向けガイドラインでは、治療だけでなく、生活習慣改善の指導も推奨されています。


卵巣がん――自覚症状が出にくく、発見時には進行がんのことも

卵巣がんは、見つけたときにはすでに進行している――そんな厳しい現実も、小林教授は率直に語りました。

「卵巣はお腹の奥にあるため、がんになっても初期症状がほとんどなく、検診でも見つけにくい。スクリーニングが有効ではないこともわかってきています」

特に注意が必要なのは、子宮内膜症の一種である「チョコレート囊胞」が卵巣がん化するケース。日本では欧米に比べ、こうしたがんの発症が多いとされています。

また、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)も話題に。BRCA1/2遺伝子の変異によるもので、家族内に乳がん・卵巣がんの患者が複数いる場合は要注意です。
「がんになるリスクは高まりますが、必ずしも全員が発症するわけではありません。むしろ遺伝子変異が分かることで、治療に適した薬(PARP阻害薬など)を選ぶことができる可能性が広がります」と小林教授は語ります。


「情報の海」に惑わされないために

インターネットが普及した今、情報は瞬時に手に入る一方で、医学的根拠の乏しい不確かな情報もあふれています。
「患者さんやご家族の不安に寄り添い、正しい知識を届けることが、私たち医療者の使命」と語る小林教授。

今回発刊されたガイドラインには、まさにその想いが詰まっています。がんと向き合うすべての人の一助として、そして迷いを抱える誰かの“指針”として、多くの方の手に届くことが期待されます。

編集部より

人は誰しも、いつか「死」を迎える存在です。
では、「死」とは何でしょうか?
そして、それに向き合う私たちの「生きる」とは、いったい何を意味するのでしょうか。

他の誰でもない「自分」として、この命をどう生きるのか。
その問いに向き合うことが、人生そのものなのかもしれません。

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